注目! パナソニック電工 「モディファイ」 声高に存在を主張するのではなく、 さりげなく馴染み、佇んでくれる高度なデザイン

完璧なカタチ


シンプルなデザインが人気で、国際的に活躍するデザイナー深澤直人氏がMODIFYのプロジェクトに起用され、全体を指揮していった。会場で熱心に観ていた女性に話しかけると彼女はデザインの勉強をする学生だと言い、もちろんNaoto Fukasawa(深澤直人)は知っているという。このだれもが知る有名デザイナーは、このプロジェクトでなにをしたのだろう。
ランプシェードと言われて誰もがまず思い浮かべるカタチが新シリーズMODIFYの半球の「DOME」、円錐台の「BUCKET」だろう。まん丸な「SPHERE」は照明の原形というべきものであるということは言うまでもない。深澤氏は、あえてその基本形(=定番)を貫いた。たとえば、定番のカタチであるがゆえに、それを極めることに徹し、従来のものではなおざりにしてきた“付随する部分”と考えられてきたようなところにこそ配慮がなされた。この記事を読んでおられる読者には画面上の映像だけではリアリティがないかもしれないが、一例を挙げれば、ペンダント型のものは電源をとるために天井から下りてくるケーブルが必ずあり、これによって位置が固定されることにもなるが、この垂直のラインの形状(姿)やシェードとの接続部の収まり具合も、電球を隠すアクリル板とシェードとの隙間も、誤差を縮め「完璧なカタチ」に近づけていった。

シンフォニーライティングを可能にした技術


擦りガラス製のボールに見えるような「SPHERE」だが、割れにくい樹脂で同じ質感を作り出している。それは、見た目の単に質感の問題ではなく、複数用いる場合などにでも揺れればぶつかるような間隔での配置にも耐えられるという。地震が発生してもこれで割れる心配はない。 また、一灯で部屋全体を照らすというではなく、複数の照明の組み合わせにより、部屋を照明によってつくる“シンフォニーライティング”という考え方も実現できる。作り出せる空間のバリエーションも組み合わせによって無数にある。

最高のチームワークが実現させた


「『日常の本質』を追究していくことが、家電を扱うメーカーとして真摯に取り組むべきことだ」という発言をこのMODIFYのプロジェクトに関わられたパナソニック電工の社員の方から聞いたとき、とても気持ちが良かった。哲学をもって仕事をしてきたからこそ使える言葉だろう。
2年以上の歳月をかけ、80回以上に及ぶミーティングを重ねてこの照明はつくられたという。“ものづくりチーム”“コミュニケーションチーム”と大きくは2つのチームがさまざまな側面から新しい商品づくりに携わった。プロセスを聞いてゆくと、そのままドキュメンタリー番組として成立するような、ものづくりへ挑む人々の物語があった。
デザイナー深澤直人氏を中心に進められてきたMODIFYの完成までの道のりを全員一丸となってゴールまでたどり着けたのは、深澤氏が「日常の本質」を一貫して突き詰めようという態度だったからと思える。私自身もキュレーターとして関わった「六本木クロッシング2004」(森美術館)で深澤氏が出してくださった作品のなかに、±0シリーズのいわゆるプロダクトデザイン作品だけでなく、映像インスタレーション作品「非常誘導灯」があった。それは非常口の扉の上の非常誘導灯の表示にある走る姿のヒト型をアニメーション(動画)にした映像作品で、いつもそこにあるモノに個性を与えていくそんな「気づき」を深澤氏は大切にしているのかもしれないし、変わらないモノだからこそ使う人が入りこめる余地(遊び)があるのだろう。
「日常の本質」はいつも見慣れたところに潜んでいて、それを見つけ出し、プロデュースして新しいものにしてゆくことが、今回のMODIFYプロジェクトの仕事だったように思われる。

関連動画

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Profile | プロフィール

原 久子<はら ひさこ>

アートプロデューサー、ライター、編集者、研究者として関西を拠点に、国内外で気鋭のアーティストたちの紹介やプロデュース、コンサルティングにつとめる。「AERA」「美術手帖」「ARTiT」「STUDIO VOICE」他の新聞、雑誌、ウェブサイトにおいて美術・デザイン関連記事を執筆。「Off- Side」展(02年・graf media gm、横浜美術館アートギャラリー)「六本木クロッシング」展(04年・森美術館)、「Lab☆Motion」展(07年・トーキョーワンダーサイト本郷)、「都市のディオラマ Between Site & Space」(08年・トーキョーワンダーサイト渋谷、09 年ARTSPACEシドニー)などの企画運営の他、美術館等での講演会、シンポジウム、ワークショップの企画コーディネートなど幅広く創造環境のサポートを行なう。共編著『変貌する美術館』(昭和堂)他。大阪電気通信大学総合情報学部教授。

川島蓉子のMILANO SALONE 2009