
事前に汐留のショールームで「モディファイ」を目にした時は、正直言って「少しシンプル過ぎるかも」と思ったのだが、パナソニック電工 デザイン開発センター 照明デザイングループの杉山雄治課長、同技師の吉川豪さん率いるデザインチームが、深澤直人さんとかかわって作り上げるまでのストーリーと、「モディファイ」自体の多岐にわたる特徴を取材して、すっかり魅入られてしまった
「モディファイ」は大きく三つのデザインバリエーションがある。
まず、「SPHERE(スフィア)」は球状の照明。「今までもたくさんあったようなかたち」と思ったのだが、記憶を辿っていくと、上部は不透明なパーツになっていたり、コードとのつなぎの部分に余計なものが付いていたり、本来的な意味で球状になっているものは、ほとんどないのではないかと思いいたった。
だからこそ、「スフィア」がほぼ完璧な球体を実現したのは大きな特徴。目にしてしばらく経つうちに「見たことがあるようでなかった」デザインだと気づかされる。
粋を究めたデザインには、このように「明快に自覚はされないが、心と身体が無意識のうちに反応する」――そういったベクトルがあるのだと思う。
優れたクリエイターと体力のあるメーカーの幸福なかかわりが生み出したデザインである。
しかし、こういった微細な部分にこだわったデザインを実現するためには、幾多の試行錯誤が必要だった。
いわゆる照明部分の素材と上部の素材を均質にし、つなぎ目ができるだけわからないように隙間を埋める。“限りなく真球に近い形状”が徹底して追及されたのだ。 しかも、内部構造に透明なパーツを使うことで、カバー全体が光る工夫も施されている。
一方、半球状の「DOME(ドーム)」と、円錐台の「BUCKET(バケット)」も同様で、カバーとコードのつなぎめの部分は、驚くほどすっきりした美しい仕上がり。 しかも、下面に乳白色のパネルが張ってあるデザインがあるも、あまり見たことがない形状だ。これによって光のまぶしさを軽減したということだが、そういった機能に加え、フォルムとしても、下面がふさがったかたちは、部屋に配した時、さりげなくモダンな印象を添えてくれる
暮らしの中で、声高に存在を主張するのではなく、さりげなく馴染み、佇んでくれる。そして、何となく全体の空気を和ませたり引き締めてくれる。そんなデザインこそが、日常空間にふさわしいと感じていただけに、「ありそうで実はなかった。こんなものが欲しかった」と心動かされたのである。
しかも光源には、電球型蛍光灯やLEDが使われおり、省エネへの配慮もなされている。「快適」と「エコ」の両立を掲げたデザインでもあるという。
東京とミラノと双方で、こういった開発経緯を聞いたのだが、深澤さんと組んでここにいたるまでの話は、まるで「プロジェクトX」のようで、どんどん引き込まれてしまう。 こういう仕事をしていて、つくづく感じるのは、「伝える」ことの重要性だ。
デザインと技術がせめぎあって、ひとつの商品を作り上げていく過程には、使い手の気持ちを動かす物語が、幾多も存在している。それが「伝わって」いくことこそが、モノの魅力を最大限に理解させるのだと、ここ数年は強く思う。
パナソニック電工では、杉山さん、吉川さんに加え、デザイン部デザイン戦略企画グループ副参事の岡井理恵さん、宣伝部企画管理グループ課長の上田昌弘さんの二人が、凸凹コンビとも言えるほど楽しい会話のやりとりをしながら、パナソニック電工のデザイン力や技術力について語ってくれた。
「伝える」こととは、マス広告を大量に投下したり、豪華なカタログを作ることを意味しているのではない。あるいは、ロジカルマーケティングに拠って、綿密なコミュニケーション戦略だけを展開することでもない。
作り手の意図や思いが、求めている人に対して、どうやったら最適なかたちで「伝わっていくのか」。これは、あらゆるモノやブランド、ちょっと大げさに言えば企業にとって、最も必要とされているコトだと思うのだ。






























