Another Report

MILANO SALONE 2009  REPORT

街に点在する関連事業のなかには、日本企業や日本人デザイナーの活躍も目立つ。
トリエンナーレ会場では、TOKYO FIBER ’09 SENSE WARE、Canon NEOREAL、グッドデザインの3つの展示が日本がらみで行なわれ、デザインと技術開発、素材開発における日本の存在が誇示されていた。
TOKYO FIBERでは企業が開発した先端人工繊維を用いてクリエータたちとのコラボレーションによる作品を展示した。クリエータの選択から組み合わせまで、デザイン界の重鎮原研哉氏によってトータルにディレクションがおこなわれた。17作品それぞれのクオリティのみならず、さまざまな要素が入っているにも関わらず非常にまとまったもので展覧会としてのクオリティもたいへん素晴らしいものに仕上がっていた。青木淳氏、佐藤可士和氏、坂茂氏といったキャリアのある建築家、デザイナーに混じって、若手の起用により日本のデザインの幅も見せていたように思う。

たとえば、東洋紡の3D スプリングストラクチャBREATHAIRを用いて、メディアアーティストの鈴木康広氏が制作した「FIBER BEING」は、新素材で作られた身体が呼吸をするかのごとくランダムに膨らんだり、へこんだりするものだった。

東信氏はユニチカのテラマックを土の代わりにして苔を生やし、会場内に庭を出現させ、TORAYの新素材uts-ultfinoで作られたのは服飾ブランドのシアタープロダクツのデザインによるテーブルクロス「THE HAPPIEST TABLE AND THE TABLECLOTH」。シアタープロダクツは、軽くてやわらかいが風を通さない素材の特性を伝えるために、足元のペダルを踏むとテーブルの天板から風が出て、クロスにプリントされた一輪の花をふんわり丸く咲かせるといったキュートな仕掛けをつくり会場で人気をさらっていた。




Canonは2008年に続き、2度目の単独出展。自社製品がどのような性能を持ち、クリエータの表現力を発揮させることが出来るのかを示す展示となっている。テーマも昨年と同様に「NEOREAL」。メビウスの輪のようにどちらが表で裏かもない15×20m、高さ6.5mの構造体をデザインし、ワイヤーフレームと伸縮性のある布で作ったのは平田晃久氏(建築家)。布が張られている部分をスクリーンに見立てて、松尾高弘氏(アーティスト)が、人の存在を感知してインタラクティブに反応する映像作品をつくった。映像はCGで描かれたクラゲなのだが、実写としか思えないほど精密に描かれている。11mの高い天井を存分にいかしてつくられた構造のなかにいると、ふわふわと海のなかをクラゲといっしょに泳いでいるようだ。高性能のプロジェクターが用いられることで細密に描かれたCGがそのままきれいに投写され、従来のドットも見えない。Canonの社内デザイナーによって作られた「_O_N_L_I_N_E_」はHDビデオカメラで撮影されている来場者の輪郭を使い、リアルタイムでランダムに効果をつけながらプロジェクターで投写してゆくもの。 日本グッドデザイン賞の歴史を回顧する展示も日本のデザインの層の厚さを物語る展示だった。

キヤノン 「NEOREAL」




今年で5年連続して出品しているLEXUSは、いわゆる見本市とは異なる展開でミラノサローネでは見せてきた。吉岡徳仁氏など旬なクリエータを起用し、空間づくりを試みてきた。今年は建築家の藤本壮介氏が大胆かつ繊細なインスタレーションを行なった。車そのものを持ち込むのではなく、透明樹脂でエンジン部分の形状まで細かく形成した車体の実物大模型を今回は中央に据えた。この部分はすでに社内で決定していたことだが、そこで藤本氏は透明樹脂を用いてつくった厚みのある板を有機的な形状に5分割したセットを車体の向きに平行にセッティング。光がオブジェにあたると波を打った裏面の凹凸が床に水面の揺らめきのように陰影を落とす。変化する照明とサウンドの効果も相まって幻想的な展示となっていた。

レクサス 「Lexus L-finesse ―crystallised wind-」




東芝も若手が中心となって「OVERTURE」をつくられ、こちらはインハウスのデザイナーとtakram(www.takram.com)とのコラボで。エコを念頭に入れたLEDによる照明のデザインを提案。触れると振動が伝わり、センサーで点灯するといった作品は実験的な要素があって、不思議の国に迷い込んだようなときめきを感じた。
ほかにも、数々の日本企業や日本人デザイナーの活躍を見ることができ、日本にいるときよりもむしろ肌でものづくり大国ニッポンをミラノの地で感じた。

Profile | プロフィール

原 久子<はら ひさこ>

アートプロデューサー、ライター、編集者、研究者として関西を拠点に、国内外で気鋭のアーティストたちの紹介やプロデュース、コンサルティングにつとめる。「AERA」「美術手帖」「ARTiT」「STUDIO VOICE」他の新聞、雑誌、ウェブサイトにおいて美術・デザイン関連記事を執筆。「Off- Side」展(02年・graf media gm、横浜美術館アートギャラリー)「六本木クロッシング」展(04年・森美術館)、「Lab☆Motion」展(07年・トーキョーワンダーサイト本郷)、「都市のディオラマ Between Site & Space」(08年・トーキョーワンダーサイト渋谷、09 年ARTSPACEシドニー)などの企画運営の他、美術館等での講演会、シンポジウム、ワークショップの企画コーディネートなど幅広く創造環境のサポートを行なう。共編著『変貌する美術館』(昭和堂)他。大阪電気通信大学総合情報学部教授。

川島蓉子のMILANO SALONE 2009